引用:https://twitter.com/disneystudiojp/status/1025741660909592577
2018年にディズニー映画『インクレディブル・ファミリー』が公開され、シリーズ一作目の『Mr.インクレディブル』を見返したくなった方も多いのでは?
そこで、ぼんやりストーリーを覚えている人も、まだ映画を見ていない人も楽しめる、『Mr.インクレディブル』のトリビアとみどころを紹介します。
これを読めば、100倍映画を楽しめるはず! ちなみに、この記事はネタバレを含みません。ストーリーを知らなくても楽しめる内容なので、鑑賞前にぜひチェックしてみてくださいね。
『Mr.インクレディブル』あらすじ
Mr.インクレディブルことボブ・パーと妻のヘレンは、世の中の平和を乱す悪と戦い、人々を危機から救い出すヒーローとして活躍していた。 ところが、ある事件がきっかけで「スーパー・ヒーロー制度」が廃止に。
夫妻は平凡な市民としてひっそり生きることを強いられ、3人の子どもヴァイオレット、ダッシュ、ジャック・ジャックとともに、”普通”の家族生活を送ろうと努力していた。
サラリーマン生活に飽き飽きし、再び世界を救うことを夢見るボブのもとに、ある日謎の手紙が届く。それはインクレディブル一家にとって、想像を絶する冒険の始まりだった……。
本当のタイトルは『Mr.インクレディブル』ではない!
引用:https://twitter.com/disneystudiojp/status/1025746491632050176
突然ですが、『Mr.インクレディブル』というタイトル、私は納得いきません! 『Mr.インクレディブル』はあくまで日本版のタイトルで、原題は『The Incredibles』。
ちょっとした違いに感じるかもしれませんが、意味が大きく違ってくるんです。 というのも、「Mr」は男性に使う敬称なので、邦題の「Mr.インクレディブル」は主人公のボブだけを意味しますよね。
それに対して、原題の「The Incredibles(ザ・インクレディブルズ)」は複数系。だから「インクレディブルさんたち」、つまりインクレディブル一家全体を指しているんです。
そう、この映画はボブだけが主役なのではなく、インクレディブル一家全員のお話。そう意識すると、映画を見る視点が変わってきませんか?
実際に、この映画のメインテーマは「家族の絆」。スーパーヒーローものでありながら、完全無欠なヒーローの映画ではありません。あくまで家族の物語なのです。
ちなみに、2018年に公開された続編のタイトルは英語版だとそのまま『The Incredibles2』で、邦題は『インクレディブル・ファミリー』。個人的には、1作目こそこの邦題が良かったのではないかと思います…!
ぜひ、「これはインクレディブル一家全員の物語なんだ」ということを頭に入れて映画を鑑賞してみてください。そうすると、原題が『The Incredibles』である理由がわかってくるはずです。
あのキャラクターの声は監督だった!
引用:https://twitter.com/disneystudiojp/status/1025729776323981317
『Mr.インクレディブル』の監督、ブラッド・バードがとあるキャラクターの声優を担当していたことをご存知ですか?
そのキャラクターとは、スーパーヒーローのスーツを生み出すデザイナー「エドナ・モード」。実在する映画衣装デザイナー「イーディス・ヘッド」がモデルになっています。
特別なパワーを持たないにもかかわらず、ヒーローにものおじしない超強気な自信家で、作中で圧倒的な個性を放つキャラクターです。
エドナはヒーロースーツのデザイナーであると同時に装備(防火・防弾などスーツに与える特別な機能)もつくる変わり者。
そんなエドナは、実は日本人とドイツ人のハーフ。その理由を監督は、「デザイナーと装備担当という2つの顔を持たせるなら、日本人とドイツ人の雰囲気を混ぜたかった」と語っています。
でも、どうして女性のエドナを男性の監督がわざわざ演じることになったのでしょうか? その理由は単純で、「監督のイメージ通りに、ドイツ語と日本語の抑揚をつけた英語を誰も話せなかったから」だそう。監督の演技に対する強いこだわりを感じますね。
(※ちなみに日本語吹き替え版は後藤哲夫さんです)
ピクサーのスタッフは芸達者
引用:https://twitter.com/fujitv_movie/status/1025717496798621701
このように、ピクサーでは声優ではなく制作スタッフが声をあてることが多々あります。 ほんの一例ですが、『Mr.インクレディブル』でも次のようにたくさんのキャラクターをスタッフが演じているんですよ。
- ジャック・ジャック…アニメーション監督トニー・フチリの息子、イーライ・フチリ
- 牧師…制作のジョン・ウォーカー
- ボム・ヴォヤージュ…プロダクション・デザイナーのドミニク・ルイ
- ニュース映像のナレーション…キャラクターデザインのテディ・ニュートン
- ダッシュの学校の先生…プロダクション・デザイナーのルー・ロマーノ
- 近所の子供…監督の子供、ニック
「わざわざスタッフを起用するなんて、ピクサーは声優が嫌いなのか?」というと、そんなことはありません。これは映画製作のプロセスに理由があります。
ピクサーでは、全キャラクターの声をスタッフが仮に吹き込む工程があります。これはあくまで想像を膨らませるためのもので、声は目安としていれるそうです。
ところが、仮に入れた声が好評でそのまま使われることも。その結果、声優による吹き替えを行わず、スタッフの声が残るというわけ。
これは『Mr.インクレディブル』に限らず、ピクサー映画ではよくあること。注意して聞いてみても全く演技に違和感がないので、ピクサーのスタッフは芸達者な方が多いんですね。
日本語吹き替え版では、ジャック・ジャック以外の声が日本人の声優に置き換わっています。そのため、ぜひ英語版でも鑑賞し監督やスタッフの名演技に耳を傾けてみてはいかがでしょうか。
ボブのサラリーマン生活は監督の実体験がモデル
監督にまつわるトリビアをもう一つ。 ブラッド・バード監督は、過去に2度も会社を首になった経験があります。そして、この経験が『Mr.インクレディブル』にも活かされているのです。
映画の中で、主人公のボブはヒーローではなくふつうのサラリーマンとして生活し、退屈な仕事と無能な上司にうんざりしています。「こんな仕事辞めてやる」と心の奥で思っていても、家族との生活のことを考えると実行に移せないでいるんですね。
ここで描かれる、「社会に溶け込めない苦悩」と「もっと自分の才能が活かせる場所があるはずだ」という思いは監督自身が過去に経験したもの。だからこそ、リアルにボブの心情が伝わってくるのです。
監督の社会人経験が活かされたシーン
もう一つ、監督の社会人としての経験が活かされていると感じるシーンがあります。 監督が以前勤めていた会社の上司は、部下の能力を過小評価して、レベルの低い仕事しか任せてくれなかったそうです。
そんな上司になりたくなかった監督は、『Mr.インクレディブル』の制作において、まだ実力が不足しているスタッフにも難しい仕事を任せました。そうすると期待した以上の成果をあげてくれ、スタッフの実力がどんどん高まっていたんだとか。
この経験が表れていると感じたのが、ボブの妻ヘレンと、長女ヴァイオレットの洞窟の場面。
上手にパワーが使えないでいる娘のヴァイオレットに対して、母親のヘレンは「あなたなら大丈夫。パパとママの子だもの。」と励まし、これをきっかけにヴァイオレットが大きく成長します。
もしこの時ヘレンがヴァイオレットの可能性を信じていなければ、彼女の成長はあり得なかったでしょうね。 このように、監督の人生経験がストーリーにも色濃く反映されているのです。
ヒーローだって、実は痛みを感じている
『Mr.インクレディブル』には、普通のヒーロー映画ではありえない描写がでてきます。 特に印象的なのは、冒頭のヒーロー全盛期にMr.インクレディブルが活躍する場面。
線路が崩落したため、ボブが体を張って電車を止めるシーンがあるのですが、この時の表情によ~く注目してみてください。
電車が向かってくるときに一瞬だけ、ボブが電車を怖がり「痛いぞ」と覚悟する描写があるんです。 普通のヒーローアニメならこういう場面でも、痛みや恐怖を微塵も感じさせず、果敢に敵へ立ち向かっていきますよね。
でも、このシーンについて監督は「スーパーヒーローにも感情や感覚があるのだと伝えたかった」と語っています。ヒーローでも怖いときは怖いし、痛みだって感じる、普通の人間なんです。そういう細かい部分もしっかり描写されているところが、この映画ならではのポイントですね。
ヒーローは傷ついても戦わなければならない
もう一つ例をあげましょう。 物語の中盤、ヘレンが洞窟の中で子供たちに、敵について「ここの人たちは子供だからといって手加減してくれない。一瞬の隙が命取りになる。」と語りかけるシーンがあります。
子供向けのヒーローアニメは、誰も死なずケガもしないのが一般的。でも監督は、「戦いには代償が必要なことを教える方がいい。」と考え、あえてオブラートに包まず、ヘレンにこのように語らせたそうです。
単純にヒーローのパワーを見せつけるだけではなく、その力の代償として「ヒーローは傷ついても戦わねばならない」という現実的な部分をしっかり見せているので、よりドラマ性があるんですね。
『Mr.インクレディブル』には他にも、「ディズニー映画だから、ヒーローアニメだから、誰も傷つかないだろう」という観客の常識を覆すシーンがたくさんでてきます。 見逃さないように、ぜひ意識してみてください。
巻き戻して何度も観たくなる、CGの技術
『Mr.インクレディブル』は2004年公開の映画。今から10年以上も昔ですが、それを感じさせないくらいCGの技術が素晴らしいんです。
みなさん、『トイ・ストーリー』を見たときに「おもちゃのウッディーやバズは可愛らしいのに、人間のアンディーや妹のCGがめちゃくちゃ怖い」と感じませんでしたか?人間のCGがまだちょっと不自然なんですよね。
そんな『トイ・ストーリー』が公開されたのは1995年。それから9年たった『Mr.インクレディブル』をみると、ピクサーの技術の進歩、特に人間の描写のすばらしさがよくわかります。
ピクサー作品で人間を主人公にしたのは初
『Mr.インクレディブル』はピクサー史上初の、人間を主人公にした長編アニメ。 動物とは違って人の動きは誰にでも分かるので、不自然さがあればすぐに違和感が出ますよね。
でも、『Mr.インクレディブル』の人物の動きはとてもなめらかで自然。体の動きだけではなく、表情まで本物そっくりにリアルなんです。
本作はアクションシーンが見どころなのは確かですが、キャラクターが会話するだけのシーンも実はすごいんですよ。
たとえば、学校でいたずらしたダッシュのために校長室まで呼び出されたヘレンが、帰りの車中でダッシュをたしなめるシーン。二人の表情をじっくり見てみてください。
頬を膨らませていじけるダッシュの子供っぽい表情と手のしぐさ、眉をひそめて母親らしく注意するものの、心の底では自分の発言に納得がいっていない様子の複雑なヘレンの表情。
眉毛の動き、目の開き方、口角の上げ下げで微妙な感情のニュアンスが伝わってきませんか? わざとらしすぎず、かといってリアルなだけではない、絶妙なCGになっているんです。
表情のほかにも、ボブの顔にあるシミ・しわや、水中に入った時の濡れた髪の質感や動きなど細部まで非常によく作りこまれています。
たった数秒のシーンに2~3カ月かかった
手書きアニメではカンタンな描写も、CGでは非常に難しいこともあるそうです。 たとえば、ボブが昔のヒーロー時代に使っていた水色のスーツが破れてしまい、「スーツの穴に手を通すシーン」だけで2~3カ月もかかったんだとか。
こんなごく単純そうに見えるシーンでも、ものすごい労力が費やされているから驚きですね。 また、中盤に登場するジャングルのシーンでは、そこに生息する葉も枝もすべて一からデザインしたそうです。葉っぱの形からデザインするなんて、考えただけで気が遠くなります……。
それほど作りこまれているからこそ、一時停止してワンシーンごとにじっくりと鑑賞したくなりませんか?一度観ただけでは見逃しがちな、素晴らしいCGにもぜひ注目してみてください。
とはいえ、これほど素晴らしい『Mr.インクレディブル』でも10年以上前の作品。最新作『インクレディブル・ファミリー』ではさらに進化したCGを楽しめますよ!
何度でも観たくなる『Mr.インクレディブル』
引用:https://twitter.com/disneystudiojp/status/1025259990590734336
さて、『Mr.インクレディブル』のトリビアと見どころ、いかがでしたか? 本記事で紹介したトリビアをまとめると……
- 『Mr.インクレディブル』の本当のタイトルは『The Incredibles』
- エドナの声優はブラッド・バード監督がつとめている
- ピクサーのスタッフは多数のキャラクターを演じている
- ボブのサラリーマン生活は過去に2度会社をクビになった監督の実体験がモデル
- ボブが電車を怖がり痛みを覚悟している描写がある
- 人間を主人公にしたのはピクサーの長編アニメ史上で『Mr.インクレディブル』が初
- スーツの穴に手を通すシーンだけで2~3カ月もかかった
- ジャングルのシーンでは、葉や枝をすべて一からデザインした
ディズニー映画ってものすごく作りこまれているので、トリビアや作品の裏側を知ると何度でも見返したくなるんですよね。
今回ご紹介したトリビアも、知ると改めて映画を見返したくなったのではないでしょうか? 何度みても新しい発見があるのが、『Mr.インクレディブル』の魅力。
まだ観ていない人も、むかし映画館やテレビで観た人も、ぜひもう一度見返してみてください。必ず、なにか楽しい発見があるはずです!
キャスト
監督・脚本:ブラッド・バード 【キャスト】
- Mr. インクレディブル(ボブ・パー):クレイグ・T・ネルソン(三浦友和)
- ヘレン・パー:ホリー・ハンター(黒木瞳)
- ヴァイオレット・パー:サラ・ヴォーウェル(綾瀬はるか)
- ダッシュ・パー:スペンサー・フォックス(海鋒拓也)
- ジャック=ジャック・パー:イーライ・フシール
- フロゾン:サミュエル・L・ジャクソン(斎藤志郎)
- エドナ・モード:ブラッド・バード(後藤哲夫)
- シンドローム:ジェイソン・リー(宮迫博之)
- ミラージュ:エリザベス・ペーニャ(渡辺美佐)
※( )内は日本語吹き替えキャスト