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皆さん! 『万引き家族』、ご覧になりましたか??
なんとカンヌ映画祭のパルムドール(最高賞)を受賞! これはオリンピックで金メダルを取ったようなもので、めちゃくちゃすごいことなんです!
「万引き」という若干こぢんまりした単語に惑わされてはいけません。訳アリ家族のつつましすぎる日常を描きつつも、ドキドキハラハラのクライムサスペンスでもあり、社会に対して問題提起する社会派ドラマでもあり……ひと筋縄ではいかない、スケールの大きな映画です!
見れば貴方もきっと心を盗まれてしまうこと請け合い!
そんな『万引き家族』、ご紹介していきたいと思います!
『万引き家族』あらすじ
※再生すると音が出ます
東京下町の住宅街。高層マンションの間に埋もれるようにして佇む平屋の一軒家に、5人の「家族」が暮らしていた。
建設現場の日雇い労働者・柴田治。その妻で、クリーニング工場のパートで働く信代。息子の祥太。信代の腹違いの妹で、風俗店で働く亜紀。そして治の母・初枝。
信代のパート代と、たまに働くだけの治の日雇い賃では5人の家族は食べて行けず、家族は初枝の年金を頼りにして生活していた。それでも苦しい家計を補うために、治と祥太は定期的にスーパーなどで食料や生活雑貨を万引きしていた。
ある寒い冬の晩、万引きを成功させて意気揚々と帰路についていた治と祥太は、マンションの廊下に放置されている少女・ゆりに声をかける。寒空の下放っておけないと思わず家に連れて帰ってしまう。
食事を与えて、治と信代がゆりを返しに行くが、ゆりの家からは夫婦が喧嘩する声と、夫が暴力を振るう音が聞こえてきた。ゆりの体には虐待を受けたような痕跡もある。信代はゆりをそのまま家に連れて帰る。
ゆりはそのまましばらく家族同然に暮らしていたが、両親から捜索願は出されていない。しかしある日、昼のワイドショーでゆりが行方不明であることが報じられる。声が小さく聞き取れなかったが、ゆりの本名は「じゅり」だった。捜索願を出していない夫婦が疑われているようだ。
一家は慌てるが、ゆり本人は帰りたくなさそうな様子。髪を切り、ゆりから「りん」と名前を変えて、新しい「家族」として迎えることにする。
6人になった「万引き家族」だったが、実は彼らには、他人には言えない秘密があった。……
監督について
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メガホンを取ったのは是枝裕和監督。本作で日本人監督としては21年ぶりにカンヌ国際映画祭のパルムドール(最高賞)を受賞しました。
是枝監督とカンヌ映画祭といえば、2004年の監督作『誰も知らない』で主演の柳楽優弥さんが最優秀主演男優賞を受賞。さらに2013年には『そして父になる』が審査員賞を受賞しましたが、今回のパルムドール獲得で、名実ともに世界的巨匠の仲間入りをしたと言っても過言ではないでしょう。
1962年生まれの57歳。映画監督としてはまだ若いと言える是枝監督。「世界のコレエダ」の活躍にこれからも期待がかかります。
キャストについて
是枝作品に欠かせない怪優といえばこの人!
治を演じたのはリリー・フランキーさん。是枝監督作では『そして父になる』『海街diary』『海よりもまだ深く』に続く4作目の出演と、もはや是枝作品には欠かせない存在であるリリーさん、「どこか憎めない中年のクズ」を演じさせたら日本随一の役者さんですね。
出演作の多くで尻を出していることで知られるリリーさん。本作でもリリーさんの美尻が出てくるのでぜひ注目してみてください。
産休カムバック! 世界が認める好演!
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治の妻・信代を演じたのは出産直後の撮影となったという安藤サクラさん。本作のキャストは国内の映画賞を総ナメしているのですが、安藤さんはフロリダ映画批評化協会賞の主演女優賞をはじめ、海外でもその演技を評価されています。
確かに本作の安藤さんの演技は凄まじいものがあります。超個性派や子役たちを相手に、真っ向勝負の演技で作品全体を支えた「万引き家族の大黒柱」と言えるでしょう。
「存在感」で魅せるベテラン女優の集大成
初枝を演じたのは是枝作品への出演6作目となった故・樹木希林さん。最晩年の出演となった本作でも圧倒的な存在感を示されています。どこまでが台本かわからないような自然な演技は、アドリブを重要視する是枝演出との相性バツグンで、特に海水浴場の砂浜の演技は、思わず息を呑むものがあります。
是枝作品初出演ながら見事な演技を見せた若手陣
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亜紀役の松岡茉優さんは風俗店で働く役でセクシーな動きも披露していますが、弱さと危うさと優しさを併せ持ったキャラクターを見事に演じています。
祥太役の城桧吏(じょうかいり)くんは、2006年生まれの12歳。思わず『誰も知らない』の時の柳楽優弥さんを思い出すような瑞々しさでした。
りん役の佐々木みゆちゃんは2011年生まれの7歳ながら、表情などはしっかり「女優さん」に見えます。
『万引き家族』の世間的評価ってどう?
「透明人間」たちの息づかい
たまに用事で原宿などを歩いていると、場違いを通り越して、自分が透明人間になったような錯覚に陥ることがあります。
この街では「映えない」オッサンは透明人間と同じなのか……などと思いながら路地を見ると、気配を殺して座っているホームレスと目が合ってゾッとしたり。
この、「映えないモノ」が最初から「無いモノ」として扱われる仕組みは、学校生活のイジメやスクールカーストのみならず、社会全体に蔓延しており、昨今その風潮はどんどん強まっている気がします。
映画の中で、りんが何ヶ月も行方不明なのに捜索願を出していない両親に対し、マスコミが取り囲んでカメラとマイクを向ける場面があります。この時点でマスコミは両親を疑っており、「すでに殺害しているのに何食わぬ顔でカメラの前に姿を現していた鬼親たち」という、映える画が欲しくて、そうしているわけです。
そして、後にりんが無事だと分かった時には、同じようにカメラとマイクを向けて、今度は「娘の無事を信じて待った両親と、奇跡的に無事だった娘との感動の再会」という、映える画を引き出そうとするのです。
当の両親にとってりんは、新しい服を買ったときは映えるが、それ以外はいてもいなくても良い、透明な存在だったのでしょう。それがネグレクト(放置)という虐待につながった……。
りんも含めて「万引き家族」の6人は、6人とも、映える世界から……社会のワクから逸脱してしまい、この日本の社会で透明人間になってしまった人たちなのだと思います。
見た人の中には、社会の底辺を生きる治たちの描き方に対して、「外国の人に見せたら『今の日本はこんなに貧しくなったのか』と思われる」と言い、「日本の恥さらし」とまで言い放つ人もいたようです。
そういうことを恥も外聞もなく言えてしまう人たちこそが、治や信代のようなアウトサイダーや祥太、りん、初枝のような弱者を社会で「いないモノ」として扱い、透明人間にしてしまっている犯人だと思います。
透明になってしまった人たちが都会の片隅に寄り添って家族になり、愛を、幸福を求めてもがきながら生きる。そんな生々しい息づかいが聞こえてくるような本作は、まさしく世界に誇れる傑作です。日本語=母国語でセリフが聞けることを幸運に思います。
『万引き家族の』の結末(ネタバレ)
※本稿には作品の重大なネタバレが含まれますのでご注意ください!
りんを拾った冬から時は過ぎて、夏になった。りんと祥太はすっかり兄妹らしくなり、りんは祥太のことを「お兄ちゃん」と呼んでいる。
ある日バーと先の店長に呼び出された信代は、人員整理のため、同僚と二人のうちどちらかをクビにしなければならなくなったから話し合えと言われる。やめる気はなかった信代だったが、「見ちゃったんだ、あんたがあの女の子と一緒にいるところ」とりんのことを言われ、仕事をやめることになってしまう。
別の日。初絵が若い夫婦の家に上がり込んで仏壇に線香をあげている。夫婦の娘らしきセーラー服姿の少女がが階段から降りてくる。「さやか」と呼ばれた娘は屈託なく初絵にあいさつする。「大きくなって…」と目を細める初絵。「上の娘さんは?」と話を降ると、夫婦はぎこちなくなり、オーストラリアに行ったまま帰ってこないと言う。
「上の娘さん」とは亜紀のことだった。亜紀は実家で「いないこと」にされていたのだ。バイトしている風俗店で、亜紀が名乗っていた「さやか」は、実の妹の名だった。夫婦から当然のように金を受け取って、初絵はその家を出てゆくのだった。
信代はパートをクビになったものの、音だけの隅田川花火大会を皆で聞いたり、海水浴に行ったりと、幸福なが続いていた。りんを拾って正解だったという信代に対して、初枝は「こんなの長く続かないよ」と笑うのだった。
りんの下の歯が抜けた同じ日、初絵が寝たまま起きないと言ってあきぎ。救急車を呼ぼうとする治だったが、信代が強い調子でそれを止める。初枝はすでに死んでいた。
魂が抜けたようになっている亜紀を尻目に、治と信代が家の床下に穴を掘っている。初枝の死体を埋めようとしているのだった。祥太もそれを手伝っている。
「いいか。これは内緒だぞ。ばあちゃんは最初からいなかった。俺たちは最初から5人家族だ。いいな」
無表情の治が言う。祥太はうなずく。
祥太を連れて銀行に来た信代がATMで金を引き出している。「誰のお金?」「ばあちゃんの」「じゃあ、悪くないね」。家族は初枝が死んだことを隠して、年金を引き出し続けようとしているのだった。
家の中に隠していた金も見つけてはしゃぐ治と信代をじっと見つめる祥太。初枝が死んで「家族の絆」のようなものが壊れ始めていた。
そんなある日、祥太は万引きするためにスーパーにやって来ていた。ふと見ると、店の外で待たせていたはずのりんが祥太の後ろに立っている。りんは家族の役に立ちたくて自分で万引きしようとしているのだった。
不審な行動に気づいた店員がりんに近づく。このままではりんが捕まってしまうと思った祥太は、積んである缶詰を倒して注意をひきつけ、ネット入りのミカンを掴んで店の外に飛び出す。
ミカンを抱えたまま逃げる祥太。執拗に追ってくる店員。追い詰めろれた翔太は、数m下の道路に飛び降りようとして、着地に失敗する。ミカンが道路に転がる。
翔太は病院に運ばれ、入院することになった。
すべてバレてしまうことを恐れた治たちは翔太を見捨てて夜逃げしようとするが、家を出たところで逮捕される。
それぞれ別の場所で取り調べを受ける治たち。警察は治たちのことを調べ上げており、次々と「家族」の秘密が明るみに出る。
治と信代は正式には婚姻関係にはなく、二人で信代の夫を殺害して埋めたという過去があった。
治・信代というのも偽名で、赤の他人である初絵の、本当の息子夫婦の名前を名乗って居座り、年金のおこぼれにあずかっていたのだった。
治の本名は「しょうた」で、翔太もまたパチンコ屋の駐車場で放置されていたところを拾ってきた子供だった。
6人の「家族」は、誰一人として血のつながりも戸籍上のつながりもない、言わばバラバラの他人同士だったのだ。
さらに続く取り調べで、亜紀は初枝が自分の両親から金を受け取っていたことを知らされる。ショックを受けた亜紀は、今まで皆で口裏を合わせて隠していた、初絵の「居場所」を口にする。
初絵の遺体が掘り出され、誘拐と死体遺棄の罪で信代が刑務所に入ることになる。前科がある治をかばい、すべての罪を信代が被った形だった。
りんは実家に戻り、祥太は施設で暮らすことになった。
治に連れられて面会に来た祥太。ボサボサの髪も切り、学校の話をする祥太に、信代は祥太の本当の両親の情報を伝える。驚く治に向かって「もう分かったでしょ!ダメなんだよ私たちじゃ」と語気を荒げる信代。
その日、祥太は1日だけ治のアパートに泊まることにする。雪が積もっていて、二人で雪だるまを作る。布団の中で治は「父ちゃん、おじさんに戻るわ」と告げる。
りんは実の両親のもとで再び孤独な生活を送っていた。何も知らないりんにとっては、幸福な「家族」との日々だった。治たちと出会った日のように、マンションの廊下に出て、遠くを見つめるりん。その視線の先に、ふと何かを見つけて……。(ここでエンドロール)
キャスト
柴田治……リリー・フランキー
柴田信代……安藤サクラ
柴田亜紀……松岡茉優
柴田祥太……城桧吏
りん(ゆり)……佐々木みゆ
柴田初枝……樹木希林
4番さん……池松壮亮
柴田譲……緒形直人
柴田葉子……森口瑤子
柴田さやか……蒔田彩珠
北条保……山田裕貴
北条希……片山萌美
店長……黒田大輔
根岸三都江 ……松岡依都美
山戸頼次……柄本明
前園巧……高良健吾
宮部希衣……池脇千鶴