引用:https://twitter.com/disneystudiojp/status/1018135540690923520
2004年に公開されたディズニー映画、『Mr.インクレディブル』。
『トイ・ストーリー』や『ファインディング・ニモ』で有名なあのピクサーが、初めて人間を主人公にすえたのが本作。当時の最先端CGやストーリーが評価され、アカデミー賞長編アニメ映画賞など多くの賞を受賞しています。
とはいえ、「ディズニーなのにヒーローもの(しかも主役はおっさん)」「可愛い動物キャラが出てこない」「どうせ子供むけでしょ?」と避けてきた人も多いのではないでしょうか?
でも、実はこの映画は子供よりもむしろ大人向け。もちろん子供目線でも楽しめますが、現代社会で日々戦う大人たちにこそ観てほしい超名作アニメなんです。
子供は派手なアクションにワクワク、大人は戦うヒーローの苦悩にほろり…。
そんな『Mr.インクレディブル』の魅力をお伝えします。
『Mr.インクレディブル』あらすじ
Mr.インクレディブルことボブ・パーと妻のヘレンは、世の中の平和を乱す悪と戦い、人々を危機から救い出すヒーローとして活躍していた。
ところが、ある事件がきっかけで「スーパー・ヒーロー制度」が廃止に。夫妻は平凡な市民としてひっそり生きることを強いられ、3人の子どもヴァイオレット、ダッシュ、ジャック・ジャックとともに、”普通”の家族生活を送ろうと努力していた。
サラリーマン生活に飽き飽きし、再び世界を救うことを夢見るボブのもとに、ある日謎の手紙が届く。それはインクレディブル一家にとって、想像を絶する冒険の始まりだった……。
※この記事は結末のネタバレはありませんのでご安心ください!
大人が共感できるスーパーヒーロー
引用:https://twitter.com/fujitv_movie/status/1025716490891231232
「スーパーヒーローもの」と聞くと、「特殊なパワーを持った主人公が悪役を倒すだけの話」と思いがちですよね?
でも『Mr.インクレディブル』は働く大人なら誰でも主人公に共感できてしまう人間ドラマがつまっているんです。なぜなら、本作はスーパーヒーローものでありながら、ふつうのサラリーマンの苦悩がたっぷり描かれる冒頭から始まるから。
主人公ボブはヒーロー引退後、ふつうのサラリーマンとして保険会社で働いています。でも、オフィスで働くボブの目は死んだ魚そのもの。
というのも、正義感が強く弱者に優しいボブは、売上至上主義で血も涙もない上司と折り合いがつかず、仕事に大きな不満を抱えているのです。かといって、5人家族の大黒柱であるボブは仕事を辞めるわけにもいきません…。
社会で働いた経験のある方なら誰しも、「こんな仕事は自分がやりたいものじゃない!」と葛藤したことがあるのではないでしょうか?職場の上司に理不尽を言われて殴ってやりたいと思ったこと、一度くらいありますよね?
ボブだってそれは同じ。元スーパーヒーローがそんなシチュエーションに置かれたら、どんな行動をとってしまうと思いますか?
「社会に溶け込めないなら消えてもらいましょう」
引用:https://twitter.com/disneystudiojp/status/1025718303220617216
社会に溶け込むしか生きる道がなくなったヒーローたち。
「ふつう」の生活に溶け込めないボブ達の姿が、社会で働く私たち大人は死ぬほど共感できてしまうんですね。
本当はヒーローとして活躍したくてたまらないのに、心を殺して「ふつう」であろうとする……。
「自分らしくいたいのに、社会がゆるしてくれない」ジレンマ。
「周りに合わせないと生きづらい」はがゆさ。
そういった苦悩は今の社会に生きる私たちの姿そのものかもしれませんね。
冒頭で描かれるこの作品のテーマのひとつ、「社会になじめない苦悩」は、何度も転職をくり返したブラッド・バード監督自身の経験がもとになっているんだとか。
徹底的に主人公に感情移入できる冒頭があるので、「スーパーヒーローだってふつうの人間なんだ」と共感でき、思わず応援したくなってしまうのです。
同じ「スーツ」でもパッケージに描かれる赤いスーツとは正反対の、地味なサラリーマンスーツ姿のボブから物語は始まりますが、もちろんこのまま映画が終わるわけではありません。この後どうやって自分らしさを取り戻すのか、果たして再びヒーローとして活躍することはできるのか…?
そこにこの映画の面白さがつまっています!
気になる悪役の存在
引用:https://twitter.com/disneystudiojp/status/1025727342499356672
ヒーローものに欠かせないのが、「悪役」の存在。
アンパンマンはバイキンマンがいるから面白いし、ドラゴンボールだって敵の圧倒的強さにハラハラするから続きが気になりますよね。
『Mrインクレディブル』にも、もちろん黒幕が存在します。この人物、基本的には嫌なヤツとして描かれるんですが、悪事を働くことになった原因がミソ。
よくありがちな、「特に理由が語られることもなく世界征服をたくらむ悪役」とは違って、本作の悪役はとある出来事がきっかけで悪の道に進むことになります。
その「悪事を働く理由」は一見すると幼稚でバカバカしいものですが、実はボブと同じ苦悩をもちつつも、全く反対の方向に暴走してしまった姿なんだということに気づくはず。
そして、それは誰しも持っている感情なのでは…?と思わずにはいられません。
私はこの悪役の行動って、みんなから「いいね!」がほしくてわざわざオシャレなパンケーキの写真をインスタにあげるのと同じようなことじゃない?と感じました。
それが行き過ぎてしまうと、ひょっとしたらこんな悪者が生まれてしまうのかもしれない……そんな風に考えてしまいます。だから、ものすごく嫌なやつなはずなのになぜか同情しそうになる瞬間も……。
『Mrインクレディブル』の悪役は、ディズニーに登場する中では一番現代的で人間臭い悪者だと感じます。「スーパーヒーローはもういらない」と吐き捨てる悪役の望みは何なのか?ぜひ確かめてみてください。
そして、そんな悪者が迎える結末は、賛否両論がかなり分かれるところ。私は思わず、「ディズニー映画でこれあり?」と叫んでしまいました。
ディズニーらしからぬラストを迎える悪役キャラにも注目してみてください!
アクションシーンに興奮!
ここまでは「大人」の目線で楽しめる理由を語ってきましたが、ディズニー映画らしく、大人が童心に帰ってハラハラ・ワクワクできるシーンも、もちろんたくさんあります。
なかでも、作中に登場する様々なヒーローがオリジナリティあふれる技を披露するシーンは見もの。簡単にキャラクターを説明すると…
- Mr. インクレディブル(ボブ)…主人公。強靭な肉体と怪力を武器に戦う元スーパーヒーロー。
- ヘレン・パー…主人公ボブの妻。「イラスティガール」の名で活躍した元ヒーロー。ゴムのように伸びる体を駆使して戦う。
- ヴァイオレット・パー…長女。引っ込み思案な中学生。体を透明にしたり、銃弾をも弾くバリアを張ることができる。
- ダッシュ(ダッシェル・ロバート・パー)…長男。やんちゃ盛りの小学生。超高速で走ることができる。あまりに早すぎて、ビデオカメラの映像にも姿が残らないほど。
- ジャック=ジャック・パー…次男。赤ん坊で、家族のアイドル。パワーを持っていない普通の赤ちゃんだと思われていたけど実は…?
- フロゾン…ボブの友人。水分を凍らせることができる。
特に、ダッシュがジャングルの中で敵の戦闘機から全速力で逃げまくるシーンは気分爽快!たとえるなら、スターウォーズで戦闘機同士が飛び回ってバトルしているシーンのようです。
これまで力を使うことを禁止されていたダッシュが、「思いっきり走っていいの⁈」と興奮気味に走り回る姿がかわいくもあり、たくましくもあり…。
このシーンは監督が最も描きたかった場面の一つで、「足の速さが唯一の武器の場合どうなるのか、誰よりも速く走れる人間が命を狙われたら何が起こるのか、映画ファンとしてどうしても見たかった」と熱く語るほど力が入っています。私も、本作で一番お気に入りのシーンです!
それに、手書きアニメでは絶対にできない、CGならではのリアルな映像のおかげで、本当に森の中を疾走しているような気分が味わえます。
キャラクター同士の個性を掛け合わせた合わせ技、心の成長、仲間割れなどヒーローもののお約束もたっぷり。ワンピースやNARUTOのようなバトルものが好きな人は絶対に楽しめるはず!
イチオシのヒーローはヴァイオレット
引用:https://twitter.com/disneystudiojp/status/1025717266581618690
ヒーローが持つ個性的なパワーは、実はキャラクターの性格とリンクしているところも見どころ。
例えば、長女のヴァイオレットはちょっと内気で引っ込み思案なためか、彼女の能力は「姿を透明にできること」と「バリアを張れること」。
ヴァイオレットにはひそかに思いを寄せる男の子がいるのですが、ただ遠くから見つめているだけ。彼と目が合いそうになるとパワーを使って透明になって隠れてしまう、シャイな一面があります。
内気なヴァイオレットはこんな風に、パワーを「自分を都合よく隠すこと」だけに使っていたんですね。
でも、とあるピンチがきっかけで「あなたには自分で思っているよりパワーがある」と励まされたヴァイオレットはヒーローとしての自覚が芽生えます。
内面的に成長したヴァイオレットは、自分の身を隠すためだけではなく、大切な人を守るために力をつかえるようになっていくのです。
この活躍の仕方が、最高にかっこいい!もしかしたら作中最強なのはヴァイオレットなのでは?と思うほど。さらに、パワーだけでなく、冷静な判断力と持ち前の賢さで家族のピンチを救っていくところも見逃せません。
ヒーローとして成長したヴァイオレットの繰り出すパワーが、後半どんなふうに変わっていくのかは、ぜひ映画をみて確かめて欲しいポイントです!
『インクレディブル・ファミリー』の前にチェック!
引用:https://twitter.com/disneystudiojp/status/1025741660909592577
大人なら思わず共感できてしまう「社会に溶け込む」ことの難しさと、子供の心で楽しめる爽快なアクション、それに家族の絆。
大人も子供も、それぞれの目線で楽しめるところが『Mr. インクレディブル』の魅力です。
10年以上昔の作品ですが、今見てもちっとも色あせていません!
2018年夏に公開されて話題になった、『インクレディブル・ファミリー』の原点となる映画ですので、ぜひぜひチェックしてみてくださいね。
キャスト
監督・脚本:ブラッド・バード
【キャスト】
- Mr. インクレディブル(ボブ・パー):クレイグ・T・ネルソン(三浦友和)
- ヘレン・パー:ホリー・ハンター(黒木瞳)
- ヴァイオレット・パー:サラ・ヴォーウェル(綾瀬はるか)
- ダッシュ・パー:スペンサー・フォックス(海鋒拓也)
- ジャック=ジャック・パー:イーライ・フシール
- フロゾン:サミュエル・L・ジャクソン(斎藤志郎)
- エドナ・モード:ブラッド・バード(後藤哲夫)
- シンドローム:ジェイソン・リー(宮迫博之)
- ミラージュ:エリザベス・ペーニャ(渡辺美佐)
※( )内は日本語吹き替えキャスト