引用:https://mantan-web.jp/article/20181122dog00m200029000c.html
1997年に、イギリスの作家、J・K・ローリングの児童書「ハリーポッターと賢者の石」が出版されてから、ハリーポッターシリーズは瞬く間に世界中の人々に愛される物語となりました。
その後、2001年に映画としてシリーズ第一作目が公開され、今度は本の中の魔法世界が見事に映像化されている様に皆驚き、感動しました。映画『ハリーポッターと死の秘宝』はそんなハリーポッターシリーズの最終章になります。
シリーズのこれまでの作品では、闇の陣営は姿を隠してじわじわとハリー達に迫ってきていましたが、もはやその段階は過ぎました。この映画では、正面から光の陣営に戦いを挑んできます。ハリーとヴォルデモートの対決、魔法界の光と闇がついに激突する様子は圧巻です。
でもこの映画のみどころは、戦いの行方だけにとどまりません。『ハリーポッターと死の秘宝』の魅力について、もっと知ってほしい!と願っている私が、注目の場面や人物について紹介させていただきます。
ハリーポッター「死の秘宝」あらすじ
ダンブルドア校長亡き後、ヴォルデモートにとって唯一の邪魔者となったハリーは、育った家を出て騎士団の隠れ家に移ります。そこに、魔法省がヴォルデモートの手に落ちたとの知らせが届きます。隠れ家も闇の魔法使いたちの襲撃にあい、騎士団員たちは散り散りになって逃げます。
ハリー、ロン、ハーマイオニーの三人は、ヴォルデモートを倒すため、彼の魂の一部を収めた「分霊箱」をみつけて破壊することを目的としながら逃亡生活を送るなかで、「死の秘宝」と呼ばれる宝の存在を知ります。
一方、ヴォルデモートは、これまでハリーを仕留めることができなかったのは自分の杖とハリーの杖が兄弟杖であるためだと考え、新しい強力な杖を探索します。
ハリー達が先か、ヴォルデモートが先か、探索の旅の果てに、魔法界の光と闇が壮絶な戦いを繰り広げます。
メインパーソン達のみどころ
肚をくくったハリーはノンストップ!
ダンブルドアが亡くなったことで、ハリーの身は今まで以上に危険になります。また、ダンブルドアがやり残した仕事(分霊箱を破壊してヴォルデモートを倒す)を、引き継ぐことになります。
そのため、焦る気持ちを抑えられない場面も多々あります。ロン、ハーマイオニーをはじめとして、多くの仲間がハリーを助けてくれますが、傷つき、倒れてゆく仲間を目の当たりにして苦しみもします。
それでも仕事を投げ出さないのは、寄り添ってくれる友人がいるから。
「友情」に支えられたハリーの覚悟は、迷いやためらいを吹き飛ばし、彼を前進させます。何が何でもやり遂げる覚悟をした人間の強さをご覧ください。
ハーマイオニーの「胆力」に感服!
三人の中でハーマイオニーは、ハリーに次いで危険な立場にいます。「純血主義」を掲げるヴォルデモート陣営にとって、マグル生まれの魔女であるハーマイオニーは、排除すべき存在だからです。
家族に危険が及ぶのを避けるため、ハーマイオニーは自ら両親の元を離れます。また、ハリーとロンの意見が対立したとき、どちらにつくか苦悩の選択を強いられたりもします。
彼女はそれらの精神的苦痛に耐えて、今何をすべきかを考え続けます。
三人の中で一番しっかり者で、その「知力」を頼りにされることの多い彼女ですが、この作品ではむしろその「胆力」に感服させられます。
ロンは「試練」を乗り越える!
ハリーの親友で、ムードメーカーのロンは、魔法族の純血でたくさんの兄弟に囲まれて育った、愛に恵まれた少年です。自分はとりえのない普通の人間だと思っていて、「選ばれし者」ハリーを羨むこともあります。
この作品では、そんなロンに最大の試練が訪れます。
家族と離れて逃亡生活をするロンには、両親や兄弟達の安否が常に気にかかります。愛する家族が大勢いるからこそ、彼の心配は尽きません。そうした彼の心の弱みに、闇は付け込んできます。
この試練に打ち勝つロンの雄姿に、「あなたはちっとも普通の子じゃない。勇敢な男だ。」と言ってあげたくなります。
「力を求める者」ヴォルデモート
闇の軍団の頂点に立つヴォルデモートは強大な力を誇る恐ろしい敵ですが、ハリーの母リリーの愛の魔法の前に敗れ去ったという過去があります。
復活を遂げたヴォルデモートは、ハリーを倒すために強力な杖を探します。
彼が頼みとするのは常に「力」なのです。
ハリーと同じように孤独な少年だったにもかかわらず、「愛」を欲したハリーとは対照的です。力を得て頂点に立つことでますます孤独を深めていく、ある意味、かわいそうな人物でもあります。
悪の象徴としてだけではなく、一人の人間としてヴォルデモートを眺めてみてください。益々ハリーとの対照が際立ちます。
ここがイチオシ!母の愛の強さ
ハリーの母リリーが、愛の魔法でヴォルデモートの呪いを跳ね返して、彼を退けたことは先程述べましたが、『ハリーポッターと死の秘宝』には、リリーと同様に子供を守ろうとする母の強さが垣間見られるシーンがたくさんあります。そんな母親達をご紹介します。
ロンの母、ウィーズリー夫人
ウィーズリー夫人はいつも子供のことを心配している心優しい母親で、ハリーのことも息子のように世話を焼いてくれます。主に家庭内のことを担当しており、騎士団員として戦闘に参加するようなことはこれまでありませんでした。
しかし、ヴォルデモート軍団との対決シーンで、闇の魔女ベラトリックスに娘のジニーが追いつめられているのを見て、「私の娘に何をする!」と飛び出し、見事ベラトリックスを倒す姿は「小熊を守る母熊」そのものです。
母の愛は闇の魔法なんかよりはるかに強いのです。
ドラコの母、ナルシッサ
ドラコの母、ナルシッサは、夫とは違い、ヴォルデモートのために働くことよりも、ドラコのことを気にかけています。
『ハリーポッターと謎のプリンス』では息子の身を案じて、スネイプに「何があってもドラコを守る」と破れない誓いを立てさせます。
この作品の中でも、部下の命を簡単に奪うヴォルデモートの元にありながらも、ドラコの安否を確認するために、ヴォルデモートを欺きます。
自らの命を危険にさらしてもドラコを助けようとする芯の強さは、息子への愛ゆえでしょう。
マクゴナガル先生
マクゴナガル先生は、母親ではありませんが、あえてここに含めます。彼女はいわばハリーの「影の守護者」です。
ルールに厳しく良識のある先生で、公平性を重んじるタイプのため、シリーズ中では、ずっと公然とハリーの味方をすることを控えていました。たださりげなくハリーを見守っている、そんな先生です。
戦うために魔法の力をふるうところは見せたことがなかったのに、この作品では、スネイプとハリーが対峙した際に、間に入ってスネイプたちに強烈な一撃を食らわし、反旗を翻します。マクゴナガル先生の気骨に感動した場面でした。
赤ん坊のハリーが、ダドリー家に預けられる場に居合わせた彼女にとって、ハリーは「選ばれし者」以上の存在なのだと感じます。
今までとは違う!あの人の一面
「悲しき二重スパイ」セブルス・スネイプの真実
ハリーがホグワーツに入学した時から、スネイプはハリーに対して特に厳しく、いつも嫌味な態度を取る陰険な先生でした。
『ハリーポッターと不死鳥の騎士団』で、スネイプが騎士団員だと知ったハリーは、即座に彼を信用ならないと決めつけます。たとえ信頼するダンブルドア校長が「セブルスは大丈夫じゃ。」と請け合っても、彼に対する疑惑は晴れません。
実際に、スネイプの役目は二重スパイで、どちらの陣営にいるのか、見ている私たちには判断がつきません。
ヴォルデモート側にも忠誠心を常に試され、ハリー達にも真意を疑われ、危ない綱渡りをしているような状態が続きます。相当精神力を消耗しているはずですが、表情からは彼の気持ちは読み取れません。
『ハリーポッターと死の秘宝』で、ハリーは彼の真実を知ります。
感情をむき出しにするスネイプの姿は、これまでの彼の印象をがらりと変えてしまうことでしょう。「悲しき二重スパイ」セブルス・スネイプの真実にご注目ください。
「目的のためには感情を捨てる」ダンブルドアの一面
ヴォルデモートが唯一恐れ、ハリーたちが絶大な信頼を寄せてきた、ホグワーツの校長、ダンブルドア。
彼の言葉や行動にはいつも何か意味があり、誠実でありながら老獪な策士で、まさに偉大な魔法使いの名にふさわしい人物です。
しかし、この作品でスネイプの真実が明らかになると同時に、彼を苦境に置き続けるダンブルドアの冷徹な一面も垣間見えます。
ヴォルデモートを滅ぼすためなら、感情を捨てて最善の策を実行する。それができるからこそ、偉大なリーダーだったともいえますが、ハリーや私たちにとっては今まで知らなかった校長の姿でもあります。
さて、この映画をみた後、ダンブルドアの評価は、上がるか、下がるか、あなたはどちらに傾くでしょうか。
ハリーとドラコ、気になる関係
ハリーとドラコは入学当初から犬猿の仲です。
ドラコはハリーのことを馬鹿にして、やたらと突っかかってきますが、ハリーよりも優れていると証明することはできません。むしろハリーの方が優秀であると見せつけられることの方が多いのです。
ライバルというには役不足、という位置づけのドラコは、この作品において、これまでの「嫌な奴」ではありません。
子供っぽいプライドの下に隠された、憶病でナイーブな性格が表に出てきています。恐怖をぐっと抑え込んだような表情には、ヴォルデモート側の魔法使いながら、思わず同情したくなります。
ドラコの父親はヴォルデモートの下で高い地位を得ることに積極的な姿勢を示しますが、ドラコは消極的です。ハリーと直接対決する場面は少ないですが、ハリーの方にはドラコを気に掛ける様子も見られます。
決して仲が良いとは言えず、立場的にも敵同士なのですが、二人の間には何か互いの苦境を思いやるような不思議な空気が流れているような気がします。ハリーとドラコの微妙な関係を感じてみてください。
この人達にもご注目ください!
ネビル・ロングボトムの成長を見よ!
ハリーの同級生、ネビルは入学したばかりの頃、気が弱くて不器用な男の子でした。ドラコたちに馬鹿にされても、立ち向かうのではなく静かに受け流す、おとなしい子でした。
年月を経て成長した彼は、『ハリーポッターと死の秘宝』では、グリフィンドール寮のリーダー的な存在になっており、自分の意見をはっきりと口に出し、闇の軍団との戦いにおいても活躍します。
真のグリフィンドール生に成長した、ネビル・ロングボトムに注目してください。
影が薄いって言わないで!ロンの兄、パーシー
ロンの兄、パーシーはウィーズリー一家の中からダンブルドアと敵対する魔法省の側についてしまった人物です。
双子のジョージとフレッドの上の兄にあたり、『ハリーポッターと秘密の部屋』では、グリフィンドールの監督生をしているところがちらっと出てきて、優等生ぶりがうかがえます。
『ハリーポッターと不死鳥の騎士団』では、会話の中で彼が魔法省に入ったことや、ロンのお父さんが彼と喧嘩をしたことなどが出てきます。
その後、彼については映画シリーズで語られていませんでしたが、この作品でヴォルデモートが自ら軍団を引き連れて抵抗勢力と対峙したときに、その姿が映っています。
兄弟の中であまりクローズアップされていないパーシーですが、彼がどんな気持ちで家族と立場を異にしたのか、気になる存在です。そして、彼の存在が、この戦いが魔法界を二分した戦いであることを象徴しています。
果たしてパーシーは家族と和解したのでしょうか。群衆の中から探してみてください。
まとめ
ハリー・ポッターの登場人物たちは脇役に至るまで、それぞれがちゃんと顔の見える存在であり、個性を持っています。
『ハリーポッターと死の秘宝』が面白いのは、ハリーの運命の対決や魔法の数々が放つ魅力のせいだけではないのです。
ぜひいろんな角度から、この映画を楽しんでください。